KMC活動ブログ

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八ツ橋シューティングについて(前編) 【KMCアドベントカレンダー18日目】

この記事は 今年もやります!KMCアドベントカレンダー!! - KMC活動ブログ の 18 日目の記事です。

昨日の記事は spi8823 君の Unity4.6で実装されたuGUIを触ってみた【KMCアドベントカレンダー17日目】 - なんかのあれ でした。

おはようございます。KMC5回生のhideyaです。
KMCでの主な活動は、ゲーム製作と良心です。

この記事は?

KMCが2014年の京都大学11月祭(NF)に出展したゲームの1つ、「八ツ橋シューティング」の製作において製作者が考えていた事などを紹介しようというものです。

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↑こんな見た目のゲームです。

シューティングゲーム(以下、STG)としての特徴

  • 敵が全て同じ見た目(生八ツ橋)
  • 敵が性質毎に色分けされている
  • 2種類のショット

くらいだと思っています。
弾幕STGではありません。私は弾避けが下手なので、弾幕STGはプレイしてると苦しいのであまり好きじゃないんですよ。それでも良い作品はプレイしていて楽しいですが。

各コンセプトを組み込むに至った理由などについて書いていきます。

敵が全て同じ見た目

2年ほど前に、鳩サブレディウス ( http://nekogames.jp/g.html?gid=HATOSABURE ) をプレイしたのがきっかけです。

敵キャラも自機も敵弾もパワーアップカプセルも見た目が全て鳩サブレというとても思い切った作品です。
その結果として必要なリソース(この場合は画像)がかなり削減できる上、ギャグ的な意味でかなりの存在感を発揮しておりなるほどなぁと感心し、この手法は使えるかもしれないと思いました。

この時はまだ八ツ橋シューティングの八の字すらありませんでした。

八ツ橋

私の通学路に、2軒の八ツ橋屋が向かい合わせになっている場所があります。

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激戦区って感じですね。毎日この間の道を通っていると、八ツ橋について思いを馳せるようになるのは当然なわけで。
その結果、「硬八ツ橋と生八ツ橋の対立」というネタが浮かび上がりました。

この時点で八ツ橋シューティングの八ツ橋の部分までは来ました。
とはいえシューティングになるとは特に思ってませんでしたし、そもそもこのネタでマトモに作品を一本作るかどうかすら真面目に考えてませんでした。

敵の色分け

少々小話をはさみます。

私は他人がゲームをプレイしているのを見るのが好きです。幼少時から兄がゲームをプレイしているのを見て楽しんでました。
特に自分が好きな作品を他人が遊んでいるのを見るのは楽しいもので、KMCの部員にゲームを遊ばせて眺めるという遊びを日頃からしていました。いわゆる布教です。もしくはゲームセンターCXです。

そんな私の布教に良く付き合ってくれる某部員が居るのですが、彼は日頃からよくゲームを遊ぶ、いわゆる「ゲーマー」ではなく、ゲームに対する慣れがあまりありません。
そのため、彼のプレイを見ていると私が苦もなく抜けた部分で詰まったり、マジかと思う行動を取ったりして、彼本来のキャラも相まって見ていてとても楽しいです。
しかし彼のプレイを見ることは楽しいだけではなくて、結構勉強になるのです。

彼にとあるSTGを遊ばせていた時のことです。そのSTGは戻り復活性のパターン構築ゲーで、彼は同じポイントで何度も何度もリトライを繰り返しました。
横で見ながらなぜ上手くいかないかを考察してみたところ、彼のプレイには以下の問題点がありました。

  • 敵の性質を覚えていない・分かっていない
    • → 弾を撃たない敵に夢中になって、危険な敵の処理が遅れてそいつに追い詰められる
  • 敵の出現・行動パターンをあまり覚えていない
    • 覚えていても、そのパターンに対応できる動きをしない
  • ゲームオーバーになったら頭を冷やさずにすぐにリトライする
    • = 死因を振り返らない

ここで大事なのは、これらは彼自身の身体能力(動体視力や反射神経など)や操作能力(当然そこまで上手くはないのですが、その場面を切り抜けるには十分だと感じました)に依らないものであり、むしろゲームを攻略する上で必要な思考が出来ていないのが原因である、という事です。
↑に挙げたものはSTGに限らずアクション系のゲームを普段プレイする人は無意識のうちにやっている事が多いです(もちろん全員がそうしているとは限りませんし、一番下なんかは私もよく怠りますが)。
彼自身は謎解きなどが好きであり、頭を使うのには慣れているはずの人です。にも関わらずそうした思考が出来ていない(ように見えた)のは、こういった思考がゲームをやらない人には馴染みのないものであるからだ、と私は考えました。
そこでホワイトボードを用いて敵の性質の解説をし、敵がどの順番で出てくるかを思い出させ、その局面でどう動くべきかをクイズ形式で答えさせる、という形で手助けをしてみました。
もちろん私は正解パターンを知っていましたが、それを教えてはお互い何も面白くないのであくまでも「思考の誘導」に留め、彼自身に正解を考えさせました。
その結果、何度かの試行錯誤の末に数回に一回はその場面を抜けられるようになりました。そこまでの疲労もあってその後のボスでギブアップとなってしまったのですが、敵の動き等を分析してそれに合った行動を考える、というSTGの(パズル的な側面での)楽しさを感じてくれたのではないでしょうか。

さて、↑の小話で何が言いたかったかというと、ゲームを攻略するための思考プロセスというものは誰しもが持っている訳でもなく、プレイしていればすぐ習得できるとも限らない、ということです。
そこで私は、ゲームに慣れてない人でもこのような思考をできるように誘導する仕掛けがあれば、そういった人にもその辺りの楽しさが伝わりやすいのではないかと考えました。
その結果、STGにおいて先程の「敵の性質を覚えていない・分かっていない」という部分の対抗策となる仕掛けとして「敵の性質がパッと見で分かるようにする」というものを考えました。
敵の色や形でどんな事をしてくるかがすぐに分かるようにすれば、それに対応した動きが初心者でもしやすいのではないか、という事です。
もちろん、見た目の違う敵は違う動きをする、色が違う敵は何かが違う、というのは当然のように行われる事ですが、それをもっと徹底して初見でも分かるくらいにしたらどうなるかなー、と。

3本の矢

ここまで3つのアイデア(同じ見た目の敵、硬/生八ツ橋の対立、敵の色分け)が浮かぶ過程を長々と書きましたが、すぐにそれらが合体して1つのゲーム案となった訳ではありません。

さて、今年の6月、私はかの有名作、レイディアントシルバーガン(Xbox Live Arcade版)を今更になって遊んでいました。
そのステージ3-B、狭い通路の中を赤・青・黄色の三角形状の敵機が列になって向かってくる場面に差し掛かった時です。

――こいつら、生八ツ橋に見える。

なぜそのような突飛な発想を持ったか今でも分かりませんが、その瞬間に↑の3つのアイデアが1つになりました。
硬八ツ橋を操作して生八ツ橋達を撃ち落とすSTG。敵がことごとく生八ツ橋なのは(すごく鳩サブレディウスのパクリっぽいけど)見た目として十分面白いだろう。しかも生八ツ橋なら色んな味という名目で色分けができる!!

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↑特性(攻撃の種類)ごとの色んな味。

ここまでキレイにアイデア達が噛み合ってしまったら、作るしかない。八ツ橋シューティング誕生の瞬間です。

余談ですが、そんなことを考えている間に私の操作する自機はスコア稼ぎに失敗した挙句、安全地帯に入り忘れてボスのレーザーに焼かれていました。

2種類のショット

その時遊んでいたレイディアントシルバーガンは7(+1)種類もの多彩な武器を使い分けるSTGであり、それらの特性を把握して適切な使いわけをするのが楽しい作品です(他にも色々素晴らしい点はあるのですが、それだけで記事が1本かけるので割愛)。
元から武器の適切な使い分けという要素は私の好物であり、丁度このような武器の使い分けをするゲームを遊んでいる時にゲームを作ろうと思ったら、武器の使い分け要素を入れたくなるのは当然の理です。

このコンセプトだけ物凄く取ってつけたようなものですが、実際その通りなので仕方ないです。

どういった武器を何種類使わせようか、という点ですが、まぁ私の技量でバランスを取りきれるのは3つくらいだろう。素直な正面ショットと、広範囲ショットと、近接攻撃みたいな「ちょっと使いにくいけど上手く使うと高威力出せたりしてドヤ顔できる武器」かなー。この辺は単なるフィーリングです。
開発の諸事情(時間とかバランスとか)により3つめのドヤ顔武器は消え、結果として以下のような2種類のショットが実装されました。

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正面ショットはまぁ文字通り。
シルバーガンのように単発撃ちが出来るようにしようかな、と思ったけどそういうのが必要なゲームにするつもりはなかったから10秒で却下。
そもそもツインショットである必要も無いっちゃないのですが、単装だとなんとなくショボく見えませんか?要は只の趣味です。
いや実際には横幅を増やして当てやすくするとか、ちゃんと両方当てないと威力カスいよ、とか2連装にすることによるゲーム的な影響はあるんですが、その辺は特に考えてませんでした。

広範囲ショットは最初は爆風を起こさずに単なる散弾だったのですが、使ってて地味だったのでカリスマ性を持たせるために爆発させてみました。
キレイな爆風が出ることによって、思わず使いたくなる武装になりました(個人の感想です)。
それはそれとして群れる敵に対しての効果が大きくなったので、広範囲の多数の敵を攻撃すると強くなっていい感じになりました。
あと単なる便利武装になってコレばっかり連射してればいいや、となるとそれはそれで悲しいので、連射力と初速を抑えてちょっぴりクセのある感じにしてみたりとか。まぁ只の趣味です。

正面ショットの名前が「ストレート」ではなく「ストレト」となっているのは、マニュアル制作を担当したjf712君の魂です。ワイドの方は普通ですね。
ちなみに、私の脳内ではそれぞれ「八ツ橋バルカン」「スプレッド八ツ橋」でした。まんまシルバーガンじゃねぇか。

また、正面ショットだけで広範囲の敵を素早く処理できてしまっては広範囲ショットの意味が薄くなってしまうため、自機の移動速度はゆっくりめにしてあります。
製作者にとっては「いかに広範囲ショットも使わせるか?」がゲームシステム上のメインテーマなのでこのような調整も必要です。もちろん適切なレベルデザインも必須です(こちらについて詳しくは後編で)。

そして後編へ……

というわけで、ゲームシステム的な部分についての喋りたいことは大体書きました。
長い文章をここまで読んでくださった皆さんありがとうございます。

ところがどっこい、ゲームシステムを作っただけではゲームは完成しないわけで。
これらのシステムを活かしてプレイヤーに良いゲーム体験をしてもらう為には、レベルデザインというものをしなければなりません。
いかにして楽しくショットを使い分けて貰うか?という部分がメインですが、それ以前のSTGとして一般的な撃って倒す楽しさ攻撃を切り抜ける楽しさという部分も決して疎かにできません。
システムが同じものでも、レベルデザインが違えば主張の異なるゲームとなるでしょう。
つまり、レベルデザインにおいても色々込めてあるモノ(オマージュとかも含めて)があるわけで、それについても語らなければいけません。

とはいえ、この後に続けてしまうと文章量が酷い事になるので(え、既になってるって?)、KMCアドベントカレンダーにもう一枠取ってあります。4日後、22日目の12/22ですね。
というわけで、次回の「八ツ橋シューティングについて 後編」に続きます。
ここまででうんざりしていなければ、その時にまたお会いしましょう。それでは。

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